【名盤】八十八ヶ所巡礼-『凍狂』

 八十八ヶ所巡礼の7枚目のアルバム。前作『日本』から3年ぶりのアルバムということで、前作までは毎年アルバムをリリースしていたこともあり、久しぶりの新譜という印象を受ける。そもそもあんなペースであのクオリティを出し続けていたのが異常でもあるのだが。

 そんなわけで待ち望んでいた1枚になるが、本作はこれまでの集大成とでも言うような充実した内容となっている。なんやかんやでMV自体はぽつぽつとyoutubeに投稿されていたので、次はこんな感じか? というなんとなくの予想はしていたが、いざアルバムを通して聴いてみるとベストアルバムのような完成度の内容に驚かされた。

 M1″虚夢虚夢”はアルバムの始まりに盛大に鐘を鳴らすような疾走感のあるナンバー。夜更けの街を走り出すような目まぐるしさに待ち望んでいたものをいきなりお披露目されたようなサプライズを感じてテンションが上った。

 M2″金土日”はMVが先行公開されていた曲の一つである。まあめちゃくちゃにポップだと思う。ちょっとした禅問答的メッセージが入っていたりと社会派な一面があるように見せておいて、ただ単に酔っ払いがそれっぽいこと言ってるだけにも聞こえる辺り面白い。

 M3″脳の王国”はこれまで案外ありそうでなかったサイケデリックな曲である。MVもやはりサイケな雰囲気バリバリで、ハッピーでトリップしている愉快さを感じる曲である。多幸感があっていい感じに気持ち良い。

 これまでなかったという意味では最も衝撃を受けたのはM7″紫光”だろう。もともとはDJ6月との”紫光”という曲からの発展だが、原曲よりもかなりメロウになり、歌謡曲的になった。こういう歌として聴かせる曲を、ちゃんと聴かせる曲として表現してくる辺り、ボーカルとしての表現力も素晴らしいものなんだと改めて実感する。

 M8″永・凹・阿阿瑠”は約8分の長尺の曲。アルバム本編としてはラストを飾るということで、しみじみと感傷的になるような始まりから徐々にギアを上げてくる。曲名からして「AOR」のもじりだろうということもあって、演奏ものびのびと炸裂している。

 今回はボーナストラックとしてM9″怪感旅行”が収録されている。本編の余韻を吹き飛ばすような怪しげで愉快な曲であり、妖怪たちの馬鹿騒ぎが展開されている感じでとても楽しい。

 アルバムとしてはまさに集大成といった感じで非常に素晴らしい内容だった。だからこそ不安なのが本作が7枚目のアルバムということである。八十八ヶ所巡礼というバンド名にちなんでアルバムを8月18日にリリースしたりとやたらと「8」という数字に絡めてくるだけあって、今回これだけの名盤をリリースしてしまうと8枚目に対する期待も相当に高まってしまうのだが、出す順番はこれで良かったのだろうか。違う意味で不安になったりもする。ともかく、素晴らしいアルバムであることには間違いないので、ぜひ聴いてほしい。

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