【名盤】八十八ヶ所巡礼-『幻魔大祭』

 八十八ヶ所巡礼の記念すべき8枚目のアルバム。なんといっても8枚目である。これまで頑なに8月18日にアルバムをリリースしていたりと「8」にこだわりを見せていただけあって、こちらとしてもアルバムとしての出来に期待せざるをえない。それもあってか本作はCDにライブDVDもついた2枚組での販売となっている。しかし、値段としては普通にアルバムとしての値段という辺り、もうちょっと欲を出してもいいような気もするが、ともかく内容としてはかなり豪華である。

 M1″JOVE JOVE”では早速エンジンをフルスロットルで上げてくる。一気に盛り上げてくる辺り、力が入っている。

 M2″怒喜怒気”ではその勢いのままジェットコースターのごとく駆け上がっていく。このアクセル踏みっぱなしで突き進んでいく感じは『攻撃的国民的音楽』を思い出すが、全体としてはさらなる進化を感じさせてくる。

 M5″慧光”は風が吹き抜けるような哀愁漂う曲。どうしようもない世知辛さみたいなものでさえも吹っ切れていくような後ろ向きな前向きさを感じる。

 曲として美しいと感じたのはM8″狂感できない”だった。こういう幻想的で洗練された曲を表現できるだけの演奏力は当然ながら持ち合わせていたが、いざこうして曲として見せつけられると見事としか言いようがないと思った。とにかく素晴らしいと感じた一曲である。

 ラストはM9″幻魔大祭Album version”。アルバムのタイトル曲でもあり、シングルとして先行配信もされていた”幻魔大祭”のアルバムバージョンである。シングルバージョンでは音の質感の生々しさもあって物騒で野蛮な世界が繰り広げられていた。アルバム版ではすっきりとした印象になったが、それのせいでかえって異世界じみた雰囲気が醸し出されており、奇妙さという意味ではより不気味となっている。

 前作『凍狂』が今までの集大成のようなアルバムだったこともあり、8枚目である本作ではどんな内容になるのかとだいぶハードルを上げていたが、その期待を裏切らない素晴らしいアルバムだった。今までの良いとこどりのような魅力もありつつ、これまで以上にバラエティ豊かな内容となっており、やはり新譜を買いたくなる魅力があるなと思った。八十八ヶ所巡礼としてのアルバムもとうとう8枚目に達したということで、これを機にぜひ聴いてほしい。

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