【感想】People In The Box-『Citizen Soul』

 2012年リリースの4枚目のミニアルバム。

 全体的に激しさや荒々しさといったものはあまり感じられず、それまで放たれていた毒気もいくらかオブラートに包まれたようになっているように感じる。時期的な問題も関係しているのでは、というような見られ方をこの時期の邦楽はどれもされていたりいなかったりするが、たしかにそういう考え方を持つ気持ちもわからなくはなかったりする。

 個人的に好きな曲はM2”親愛なるニュートン街の”。曲名からして思わず口に出したくなるが、「ある日太陽が堕ちてきて突き刺さった」という歌い出しからして面白い。物語じみた歌詞と、夜明け前のような空気を醸しだす曲とが相まってなんとも人形劇のような可笑しさを感じる。

 M5”ニムロッド”は風が吹き抜けるような音とともに言葉が駆け抜けていくのが凄まじい。凄まじい曲という表現が出てしまうくらい、きれいな音の中に感じるはっきりとした力強さがこの曲には込められていると思う。そもそもこういう曲って形にできるものなんだとも思う。ちなみに過去の芥川受賞作に『ニムロッド』(著:上田岳弘)というこの曲と同名の小説があるが、驚くことにこの曲がもととなっているらしい。

 ラストのM6”汽笛”は缶が転がるような音が用いられていたりと、曲名のように汽車が過ぎ去っていくような寂しさとアルバムとしての終わりを感じさせる曲となっている。

 『Ghost Apple』『Family Record』『Citizen Soul』『Ave Materia』辺りを続けて聴くのが実はお気に入りだったりする。中でもこの『Citizen Soul』は聴いていて楽しい。別に特別明るいアルバムというわけではないだろうが、音楽としての面白さを感じる。特に”ニムロッド”は衝撃的だったのを今でも良く覚えている。

『Citizen Soul』
1.沈黙
2.親愛なるニュートン街の
3.ニコラとテスラ
4.技法
5.ニムロッド
6.汽笛

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