【感想】People In The Box-『Rabbit Hole』

 2007年リリースのファーストミニアルバム。公式として最初のリリース作品(のはず)。

 全6曲だがどれもこれも曲として強い。M1″She hates December”、M2”Alice”、M3″ブリキの夜明け”と前半の3曲だけでも怒涛の勢いである。People In The Boxの魅力がもうこの時点で溢れんばかり発揮されている。

 M1″She hates December”からして要素がしっかりと詰まっている。おとぎじみた雰囲気に良質なメロディと、そして『Ave Materia』辺りまでの少年じみた声質も相まって刹那的な危うさも秘めた魅力を放っており、最初の作品の1曲目とは思えない名曲になっている。

 M2″Alice”ではさらにファンタジックな世界へと連れ出していく。まるで空から落ちていくかのような幻想的な浮遊感を味わえる。

 M3″ブリキの夜明け”は個人的に本作でも特に好きな曲である。夜明けとあるように朝と夜の境目の淡い空模様のようなぼんやりとした情景が思い浮かぶような儚さを感じさせる叙情的な曲だ。

 ラストはM6″鍵盤のない、”で幕を閉じる。最後のポエトリーリーディングと共に演奏も激しさを増していき、そして一気に収束していく終わり方は余韻を感じさせる。ポエトリーリーディングという手法は例えるなら曲中にラップが入るような違和感を感じる人もいるだろうし、好みが分かれるところだろうが、こういう入れ方であればうまく溶け込んでいると感じるので良いと思う。

 以降の作品とは違ってジャケットに本人が写っているため、並べたときにちょっとした違和感を感じたりもするのだが、これはこれでああ最初なんだなというわかりやすさもあって面白い。

 初期だからこその瑞々しさもありつつ、むき出しのセンスが顕になっていたりもする良いアルバムである。

『Rabbit Hole』
1.She hates December
2.Alice
3.ブリキの夜明け
4.夜の人々
5.サイレン
6.鍵盤のない、

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