【感想】People In The Box-『Bird Hotel』

 本作は2008年リリースのミニアルバムであり、People In The Boxの現在のメンバー体制での最初の作品でもある。

 全6曲ということでコンパクトな仕上がりとなっているが、1曲1曲がどれも強く印象に残りやすいミニアルバムだと思っている。

 M1”完璧な庭”からして本作の雰囲気を伝えるに足る曲である。よくマスロックとしてカテゴライズする層なんかはこういう曲をイメージしている印象がある。

 M2″海抜0m”、M3”レントゲン”と瑞々しさと儚さを兼ね備えた曲が続く。この時期の音の質感なんかも本作の空気を構成する上で重要な役割を果たしているのかもしれない。レントゲンの歌詞の一節に「すれ違うベビーカーでまた会おうぜ」というものがあるのだが、初めて聴いたときにこのフレーズにあまりにも心を打たれ、ずるいとすら思ったことを未だに覚えている。人生で一度は言ってみたいセリフである。

 M4″月曜日消失”はのちの『Ghost Apple』の1曲目の原型を感じさせるが、本作で聴くとまた受け取り方が変わるのが面白い。

 そして、本作を象徴する1曲といえば最後のM6”ヨーロッパ”だろう。約6分とアルバムの中でも最長となる曲だが、それだけに曲としての展開も素晴らしいものとなっている。1曲だけで1つの世界が展開されていくさまはまさに圧巻である。途中の語り、いわゆるポエトリーリーディングから怒涛のクライマックスへと向かっていく流れはぜひ味わってほしい。


『Bird Hotel』
1.完璧な庭
2.海抜0m
3.レントゲン
4.月曜日消失
5.昏睡クラブ
6.ヨーロッパ

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