【感想】People In The Box-『Talky Organs』

 アルバムをアルバムとして通しで聴くことの魅力が失われつつある一方で、だからこそ逆にアルバムとして聴くことの良さが見直されるみたいな流れとかありませんか。仮になかったとしても個人的には大事にしていきたい音楽の楽しみ方だと思っているので、その良さは忘れずに行きたい。

 そんな話はともかくとして2015年リリースのPeople In The Boxのミニアルバム『Talky Organs』。アルバムにせよシングルにせよ全体的な流れのようなものが感じられるアーティストだけど、本作に関してはそれが割とわかりやすい。それは歌詞だったり曲調だったりから感じ取れるものではあるが、ここまで露骨と行ったらあれかもしれないがわかりやすいのも珍しいな、と思った。Ghost Appleのように曲名からしてアルバムとして何らかの流れや物語が展開されているんだろうな、と把握することはできても解釈するのが難しかったりするので、歌詞から直接的にストーリーが読み取れるのは意外だった。

 M1”空は機械仕掛け”ではパイプオルガンのような荘厳なイントロからドラムが鳴り響くのが印象的である。アルバムの1曲目だけあって、物語の始まりを告げる雰囲気を醸し出している。

 M2”セラミックユース”はどことなく俯瞰したような視点と無機質な音が全体的に不気味に感じられ、曲としては特別暗い音ではないのにそこはかとない怖さがある。「君が生まれて最初にしたこと それから毎日続けたこと」という謎めいた歌詞が繰り返されるが、これはつまり多分そういうことなのかなと思った。アルバムを通して漂う悲しさの一端だ。

 M3”机上の空軍”、M4”映画綺譚”と続いて物騒な雰囲気が立ち込めてきたところでM5”野蛮へ”。この曲は嵐の前の静けさ、という言葉がぴったり合う。いよいよ物語がクライマックスに、それも決して良くはない方へと進んでいくのだが、妙に穏やかな曲調と合わさって辛い。

 そしてM6”逆光”である。MVが公開されているので、曲単体として聴いたときは単純にかっこいい曲という印象でしかなかったが、アルバムの流れとして聴いてみると物語の一番凄まじいところを担っていることに気づく。激しさの中に美しさがあり、終わりの始まりが繰り広がられる様がまさに曲名のとおりであると感じられた。

 最後のM7”季節の子供”はアルバムの中ではエンドロール的な役割を果たしている。温かみがあるようでいてどうしようもない悲しさも含まれているような気がして、焼け野原のような清々しさがある。牧歌的な雰囲気に似つかわしくないアウトロのノイズが物語としてのやるせなさを表している。

 アルバム全体を通して伝わるストーリーははっきりと言うのはあれかもしれないがこれってつまりそういうことですよね、と思った。けっこうはっきりとコンセプチュアルなアルバムだったので、アルバムを通しで聴く楽しさを味わうのにはおすすめである。

『Talky Organs』
1.空は機械仕掛け
2.セラミック・ユース
3.机上の空軍
4.映画綺譚
5.野蛮へ
6.逆光
7.季節の子供

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