【感想】People In The Box-『Weather Report』

 2013年リリース、People In The Boxの4枚目のアルバム。

 一番好きなアルバムです。と同時に一番オススメしにくいアルバムです。

 まずアルバムなのか? という。なんせトラック数自体は「1」である。トラック数だけで判断すればシングルになると思う。しかし、曲数は21曲となっている。どういうことかというと全21曲1トラックというアルバムなのである。ちなみに再生時間は70分超。下手したらそこらのアルバム2枚分のボリュームにはなる。それを1トラックにしたものだから「このアルバムは70分以上あるけど、最初から最後まで飛ばさずに聞いてね」という捉え方をするでしょう。というかした。今となっては一番好きなアルバムだけれども、最初は余計なことしなくてもと思った。

 実際、聴いてみると1トラックにした理由も感じはする。実質”Weathe Report”という1曲のみで構成されているとも言えるので、普通のアルバムと比べて曲間の隙間はないためつなぎはスムーズである。また、いわゆる歌モノではないインタールード的な曲もいくつか含まれているので、これをアルバムの流れとして構成していると考えると強制したくなる気持ちもわかる。曲単位で見たら飛ばしてしまうかもしれないが、アルバムの構成要素としてみるとこれらの曲があるとないとでは完成度がガラリと変わってくると思う。

 ともあれ、アルバムとしては一番好きと思えるほどに魅力的なんですよね。

 M1”気球”は旅の始まりを告げるような開放感、続くM2”砂漠”では異国の地をさまようかのような雰囲気と、全体として架空の世界を一周するかのような感覚を味わえるのが特徴である。”気球”に乗って各地を渡り歩いた結果、最終的に”開拓地”に行き着くというストーリーを追体験するかのような没入感があって、通しで聴いたときの満足感が本当に高い。

 どうしてもこのアルバムを聴くときはこの曲が、というよりもまとめて聴きがちだが、曲として分けてみてもいい。そもそも気球からして幻想的で最高という話である。歌モノとして印象に残りやすいのは中盤の”塔(エンパイアステートメント)”→”真夜中”→”夏至”→”潜水”→”新聞”の流れだと思う。幻想的な世界がここで更に深まっていくようでアルバムの流れとしてもピークに達している箇所だと感じる。

 気球で始まって開拓地で終わるというのがアルバムとしての構成になるが、以前の再現ライブでは気球が最後に配置されていた。それを聴いたとき、この解釈もあるのかと思って、より一層このアルバムの良さが高まったのをよく覚えている。

 結論としてPeople In The Boxで一番好きなアルバムとなるとこのWeather Reportになるのだけれど、やはりどうしても物理的な特徴から勧めにくくはなってしまう。各種サブスクリプションサービスでは曲単位で分割されているので(賢明な判断だと思います)、そこから歌モノだけ聴いてみても楽しめると思う。もし気に入ったら、ぜひアルバムとして通しで聴いてほしい。そして、聴き終えたときの満足感を味わってほしい。

『Weather Report』
気球
砂漠
亀裂

皿(ハッピーファミリー)
起爆
投擲

空地
塔(エンパイアステートメント)
真夜中
夏至
潜水
新聞
大陸

脱皮中
脱皮後
大砂漠
鉱山
開拓地

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